成熟した市場で新製品を投入する際には、消費者のインサイトの変化をとらえられなければ、既存商品からシェアを奪えない。逆にそれがうまくいけば既存商品との差異化が容易になる。 ライオンは2010年1月に発売した洗濯用コンパクト液体洗剤「トップ ナノックス」を半年間で約1400万個売り上げた。当初の販売目標を30%ほど上回ったこともあり、同社の液体洗剤の売上高は前年同期比で1.6倍に達した。 洗剤の宣伝広告ではこれまで、油汚れの除去や白さなど、「目に見える汚れ」を落とす機能をうたったものが多かった。だが、ナノックスは「見えないにおい汚れ」への強さを前面に押し出して大ヒットにつなげた。ライオンは主婦たちが洗剤に求める特徴や機能が年々変わっていることを、観察やインタビューなどから突き止めていた。 変化をとらえた同社の定性調査は、「エスノグラフィー」と呼ばれる手法と似ている。もともと文化人類学から生まれ