川口 ひろ子 待ちに待った新国立劇場「紫苑物語」に、体調不良で足を運ぶことが出来なかった。ところが直後にNHKBSでこの公演が放映され、オペラは絶対ライブ主義の私としては不本意ではあるが、栄えある世界初演の舞台を映像で鑑賞することが出来て、まずまずの結果となった。 「紫苑物語」は、原作、台本、演出、作曲、演奏のすべてを日本人で行い、新しい時代のオペラとして此処東京から世界に発信しようという壮大な発想から生まれた。 時は平安時代、青年宗順は歌の名家に生まれ豊かな才能に恵まれながらこれを捨て、弓の道に己を見出そうとする。心に葛藤を抱きつつ、弓矢の先にある生きることの真実を確かめたくひたすら進むが、彼の前に現われたのは紫苑(勿忘草)の生える山だ。岩に彫られた仏の顔に魔の矢を放つと大音響と共に山は崩れ宗順を飲み込む。 演奏面が大変充実していて特に東京都響のオーケストラが素晴らしかった。豊かな響きの