いつの時代も、創造性の核には個人の「発想」があった。 「発想」をかたちにするには技術のたすけが必要だが、情報通信技術の発展は、そのプロセスを大きく変えた。 「発想」にはじめから、技術がビルトインされるようになったのだ。 そうした発想のあり方を、かりに「数理的発想法」と名づけてみた。 連載第五回目にご登場いただくのは、遺伝子工学を題材にした『Gene Mapper』というSF小説の作者である藤井太洋さん。 通勤途中にiPhoneで執筆し、電子書籍で自己出版したこの作品は、1年も経たずに9000部以上ダウンロードされ、大いに話題になった。 「電子書籍による出版」というプロセスにばかり光があたりがちだが、「小説」を書くという行為に、藤井さんはもっと大きな野心を抱いている。 今回のキーワードは〈リテラチャー〉と〈ラボ〉である――。 遺伝子工学と拡張現実が発達し、いまのインターネットが崩壊してあらた