「きれい事じゃないんだ、聖書の言葉は」 これは読者への挑戦状でもあり、またありのままの聖書の現実を物語っている。 著者は14年間、歌舞伎町の裏にある日本福音ルーテル東京教会での牧会を経て、コロナ禍がピークの2020年に1年間、BLM(ブラック・ライブズ・マター)運動の拠点にもなったミネアポリスの病院でチャプレンを務め、2022年に帰国。現在はルーテル津田沼教会で牧会をしながら全国の病院で働く。 「罪人」「悲しみ」「怒り」「希望」の4章25話から成る本書は、聖書の物語と著者の体験を通して、この世界の理不尽とそれでも神が共にいるということを真っ直ぐに語る。神学用語やギリシャ語、ヘブライ語などによる説明を極力避け、クリスチャンでない人にも分かりやすいよう記されているのも特徴である。 聖書にはさまざまな物語があり、特徴もあれば読み解くのに難解な箇所、さらには矛盾とも思える記述もある。しかしそれらの