「夏の風物詩」をボーッとテレビ観戦していた時、阪神上本の心配顔をふと思い出した。あれは今季開幕前だっただろうか。甲子園クラブハウスへ続く薄暗い通路で、なんとなく高校野球の話題で盛り上がっていた時のこと。「でも、甲子園に出て苦しむ選手もいますから、そこは心配ですよね。子供の人生を甲子園で決めさせてしまうのは酷ですからね」と突然、マジメな顔つきになったのだ。 もちろんご存じの方も多いだろうが、上本自身は「甲子園の申し子」的な存在だった。広島の名門、広陵時代は4季連続で甲子園に出場。2年春のセンバツ大会では全国制覇に導き、甲子園通算成績は打率5割の7打点、1本塁打と飛び抜けている。そんな男なのに、毎年甲子園を見る度に、傷ついた選手たちの心が気になってしまうという。 「ものすごく注目度が高い大会だから、たとえばサヨナラエラーをしてしまった選手なんかは、大人になってもずっと言われ続けたりするじゃない