一人暮らしを経験して料理を覚えようと、いわゆる自立した人間になろうと、おれたちは実家に帰ればやっぱり母親の手伝いを何もしない。自分の家ならば昼時になれば簡単な料理でも作るだろうけれども、実家に帰ればそれができなくなる。小さい時も母親にいくら言われようとなかなか家の手伝いというものは自分からはできないものだった。 これは当たり前で、一重におれたちが家のことを把握していないから家の手伝いをしたくないのだ。母親はいきなりおれたちにトイレの掃除をしろだとか命じるものだけれども、おれたちはトイレの掃除道具がどこにあるのかさえ知らないし、例えば全自動なトイレに水をかけても良いのかだとか、どのレベルのよごれまで落とせばいいのかだとかも知らない。知らないことばかりで手をつけられなくなる。 母親が昼飯を用意せずに出かけているとおれたちはカップ麺を食べて飢えを凌いでいたものだけれども、母親は帰宅するなり「なん