剣道大会がなければ決して足を伸ばすことのなかった鄙びた町をたずねて、 戦火に遭わなかった土地の奥ゆかしい美しさに心打たれることがある。 古さを上手に繕っている場所は、過去そこに生きた人の気配を感じさせて、 初めて訪れた人間をも柔らかく受け入れてくれる。 もし60数年前、戦争が「なかった」としたら、日本はどんな国だったのだろう。 「あの戦争に「勝った」としたら」みたいな「妄想」よりも、私は戦争が全く「なかった」方を時々想像する。 町が丁寧に受け継がれてきたことをわれ知らず誇るのを見ると 60数年前に日本の主要都市から奪われたものの大きさに今更ながら悲しみを覚える。 戦争が無惨に奪うのはそこに住む人の命だけではない、そこに「未来」住む人と「過去」を結ぶつながりも断つ。 地上侵攻が始まったガザの街がどのようなつくりであるのか日本の片隅に生きている私が見ることはない。 それでも多くの人が、子どもが