あらゆる人との出会いが自分を変えてくれた カウンターに並ぶ2つの鍋を巧みに操る近藤さんの天ぷらは、斬新さと繊細さを併せ持つ。厚さ7 の名物「サツマイモ」や、アメ細工のようなかき揚げの「ニンジン」など、丁寧な手つきで仕上げる、鮮やかな天ぷらたち。油の温度と揚げる時間のバランスが作り出す絶妙な食感と、口中にふわっと広がる素材の風味に、思わず顔がほころんでしまう。「(料理を食べた)お客の反応を見るのが本当に楽しいんですよね」 そう語る近藤さんは今年58歳。18歳の時、御茶ノ水にある「山の上ホテル」で和食の修業を開始、以後才能が認められ23歳の若さで料理長に就任した。文豪や著名人が多く滞在していただけに、ホテルに勤務した25年間には、近藤さんの人生を変貌させる出会いがたくさんあったという。「修業時代、写真家の土門拳さんから突然 味 と書かれた直筆の額が送られてきてびっくりしました。その迫力ある文