ミツハシ:シマジさんに買い物の方法を聞くとは大胆な相談者ですね。おそらく、シマジさんは、美しいものを見つけると値札なんか見ずに、「余はこれを所望する」と言って買っているんだと思いますよ。 シマジ:「余は所望する」とは言わないが、だいたいそんなところだ。 ミツハシ:やっぱり値札は見ない? シマジ:もちろん、展示棚に値段が表示されていればそれは見る。それで、高ければ人並みに悩む。悩んで「やめておこう」と諦めることもある。だが、本当に心を奪われた品物だと、頭から離れないんだ。 その後、飯を食っていても、読書をしていても、ベッドに入っても、あの美しい品物が頭の中を占拠して、うまい料理にも、おもしろい本にも集中できなくなる。ベッドの中で目をつぶっても、瞼の裏にそいつがチラチラと姿を現し、なかなか寝付けない。ようやく眠れても、誰かに買われていってしまう夢を見て悪い汗をかく。夢の中でその品物が潤んだ瞳で