もし、バカな話をする人がみなバカな人で、バカな人がする話がみなバカな話だとすれば、話は非常に簡単だ。だが、世の中そう甘くはない。バカな話をする人がバカな人である場合もあれば、バカな話をする人がバカな人でない場合もある。また、バカな人がする話がバカな話の場合もあれば、バカな人がする話がバカな話ではない場合もある。これをまず踏まえておこう。 さて、ある時に、バカな話をする人を見かけたとしよう。「ああ、バカだ。なんてバカな話なんだ!」と心の底からそう思い、「君はなんとバカな話をするのか」と口に出して言う。ここまではまあいい。しかし、これに続けて「君はなんとバカな人なのか」と非難するのは、あまり褒められたことではない。なぜなら、件の人が本当にバカな人で、それゆえバカな話をしたのか、それとも件の人が本当はバカな人ではなく、にもかかわらずバカな話をしたのか、そのふたつの可能性のうちから、何の考えもなし