★これはペンです/円城塔 私たちは歩いたり食べたりするのと同じくらい自然にしゃべるので、言葉が道具だなんてまさか思わない。しかし、たとえば次のような目にあったらどうだろう。 ・文を作るのにいちいち活字を拾わねばならない。しかも活字は不足しているうえ磁石でくっつきあっていて離れにくい。 ・qあwせdrftgyふじこlp;で「ふじこ」が出てきた。 ・わけのわからない詩を聞かされて感想を尋ねられた。 ・モスクワで「СТОП」の標識を「STOP」に置き換えて車を運転した。 ・Googleで自分の名前を検索したら、身に覚えのない犯罪行為を連想させる単語が出てきた。 ・それどころか、「身に覚えのない犯罪行為を連想させる単語」を検索したら自分の名前が出てきた! ・「この文は偽です」という文の真偽を問われた。 ・ある論文を査読しようと思うが、タイトルが「境界線を侵犯すること:量子引力の変形解釈学へ向けて」