精神科病院を廃止したイタリアで、精神障害者が役者を務めるプロの劇団が来日し、11、13日に公演する。役者たちは、精神障害と向き合いながら、地域社会で暮らす中で感じてきた自由な感性と葛藤を、舞台での表現にぶつけている。 イタリアでは40年前、精神科の患者は自分の意思で医療を選ぶ権利があると規定した「バザーリア法」が施行され、入院による治療から、通院と地域での生活・就労支援に移行した。 この劇団は「アルテ・エ・サルーテ」。北部ボローニャ地域の精神障害者らが集まり、2000年に設立した。地元の公立劇場を拠点に、国内外で公演を重ねてきた。役者のほとんどは精神障害者で、医療機関に通いながら劇団と労働契約を結び、地域で自立して生活。今回は、精神科病院に入院させられたフランス革命期の貴族サド侯爵が、ほかの入院患者とともに、フランス革命指導者マラーの死を通じて、自由を求める戦いを描いた劇中劇「マラー/サド
どこまでも続く牧草地は、ニュージーランドやオーストラリアを象徴する光景だ。が、その主役である羊や牛の「げっぷ」は、地球温暖化の原因と指摘されてきた。ならば、げっぷを出さないようにできないか。そんな研究が進んでいる。(インバカーギル=小暮哲夫) ニュージーランド南部インバカーギル近郊。政府系研究機関「アグリサーチ」の農場で、羊がゆったりと草をはむ。「外見ではまず区別がつきませんが、この中に『低排出羊』と『高排出羊』がいます」。スザンヌ・ロウ博士が説明した。 羊や牛、ヤギなど「反芻(はんすう)動物」は、胃でえさを分解する際にメタンガスを発生させ、その9割以上をげっぷ、残りをおならで出す。ここでは羊をげっぷの多い・少ないで100匹ずつ分けて研究している。 メタンガスは温室効果が二酸化炭素の25倍だ。同国で羊は人口の5倍以上の2700万匹いる。げっぷの少ない羊を増やせないか。2009年に研究を始め
米国の連邦最高裁判事にブレット・カバノー氏(53)が就任した。トランプ大統領が出した人事案を、上院が6日に承認するまでには、カバノー氏の性的暴行疑惑も浮上した。1カ月後の中間選挙を控えて国論が二分されたうえ、司法制度への信頼も傷つくなど、大きな禍根を残した。 6日の上院の採決は、50対48で賛成多数だった。AP通信によると、最高裁判事の指名承認では1881年以来の僅差(きんさ)だという。 カバノー氏の就任で、与党・共和党の支持者にとっては、長年の悲願だった保守派が有利な最高裁が実現した。トランプ氏はカンザス州の演説で「我々の大きな勝利だ。11月の中間選挙は急進的な民主党を止めるチャンスだ」と述べた。 一方、直近の世論調査では、半数近くがカバノー氏の承認に反対。議事堂や最高裁前では、数千人がカバノー氏の承認に抗議した。野党の民主党は中間選挙で、下院で過半数を取れた場合、カバノー氏を弾劾(だん
南仏マルセイユ港を拠点に、地中海で難民の支援活動をする国際NGO「SOS地中海」の事務所が5日、移民反対を掲げる仏右翼団体「アイデンティティー世代(GI)」によって一時占拠された。SOSは難民救出船「アクアリウス号」の船籍を失ったばかり。欧州では、移民や難民への視線がますます厳しくなっている。 AFP通信によると、5日午後、SOSのマルセイユ事務所にGIの活動家約20人が押し入った。発煙筒をたき、事務所の窓から、「SOSは人身売買の共犯者だ」と書いた横断幕を掲げた。ほどなく警察が駆けつけ、22人を拘束した。SOSのスタッフにけがはなかったという。GIは2012年に設立され、仏伊国境などで移民反対デモを繰り広げてきた。 SOSは2015年の設立以来、アクアリウス号を使って地中海を渡る難民ら3万人近くを救出してきた。ただ、9月に58人を救い、フランスへの入港を求めた際には、マクロン仏大統領が「
途上国の経済発展やテロ組織の根絶に取り組む国連開発計画(UNDP)アフリカ局長のアフナ・エザコンワ氏がTICAD閣僚会合で来日し、朝日新聞の取材に応じた。若者が過激派組織に加わるのを防ぐためには「雇用や教育の機会をつくる取り組みが大切だ」と述べ、日本の支援に期待を示した。 UNDPは2015年から2年間、「イスラム国」(IS)など過激派組織の現旧メンバーら男女718人に加入理由などを尋ねた。自発的に加入した495人の半数は信教以外の理由を挙げた。さらにその6割はイスラム教の聖典コーランが読めないか、理解が限られていると答えたという。同局長は調査結果について「意外な回答で驚いた。職業訓練や雇用の機会を得られず、自国の政府に不満を持つ回答者が多いことも分かった」と述べた。 その上で、「アフリカの国々は日本の先進技術やそれを伝える企業や団体、人材を求めている。労働人口も多く、才能や情熱ある若者も
私にとって、いわば蜃気楼(しんきろう)のような存在だった。 目の前に見えているのに触れない。時にゆがんだり逆さに見えたり。つかみきれない未知の世界でもあった。 朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)――。 北京特派員をしていた6年間。北朝鮮の内情に迫ろうと、国境に数十回出向いて定点観測をした。1300キロに及ぶ中朝国境は、車でほぼたどってみた。国境を隔てる金網越しに朝鮮人民軍の兵士に声をかけ、装備や食糧の事情について探った。北朝鮮から来たばかりの脱北者からも最新の情勢を聴いた。両国を隔てる小川越しに北朝鮮の農民と話をした。中国側で漁船を借りて中朝国境を流れる鴨緑江から対岸に向かってシャッターを切り、朝鮮人民軍の監視船に追いかけられたこともあった。 それでもなお、一度も越境したことはなかった。私にとってはこんなに身近にありながら、その境界線は果てしなく高く、そして深く感じていた。 幸運にも今回、北
日本と韓国は8日、両国関係の転機となったと評価された1998年の小渕恵三首相と金大中(キムデジュン)大統領による「日韓パートナーシップ宣言」から20年を迎えた。両国は節目を利用して関係を強化する戦略も描いていたが、自衛艦旗(旭日〈きょくじつ〉旗)をめぐる葛藤が起きた。宣言の未来志向の精神が生かされなかったのは、なぜなのか。 「2人の決断を再確認し、日韓(関係)をしっかり前向きに進めていきたい」。河野太郎外相は5日昼に行った記者会見で、宣言についてこう語った。 ソウルで1日に開かれた記念式典では、韓国の李洛淵(イナギョン)首相が「金大中氏のバランス感覚と、小渕氏の配慮が最強の両国関係をつくった」と振り返った。日韓議員連盟会長の額賀福志郎元財務相ら約200人の参加者からは、大きな拍手が起きた。 98年10月の金氏の訪日にあわせて出された宣言は、小渕氏が韓国国民に植民地支配のおわびを初めて表明。
トランプ米大統領が連邦最高裁判事に指名し、連邦議会の上院から承認されたブレット・カバノー氏(53)が8日、ホワイトハウスで宣誓式を行った。同氏には過去の性的暴行疑惑が浮上していたが、トランプ氏は演説で「無実だと証明された」と強調した。 カバノー氏を巡っては、高校や大学時代に、複数の女性が性的な暴行を受けたと告発し、野党・民主党を中心に承認に反対する運動が全米に広がった。 これに対し、トランプ氏は演説で「国を代表し、ブレットと家族に対し、あなた方が強いられたひどい痛みと苦しみについて謝罪したい。国に奉仕するため前に進む人が受けるべきは、公正かつ厳粛な評価であり、うそやごまかしに満ちた政治的、個人攻撃のキャンペーンではない」と野党などを批判した。 その上で「カバノー家に起こったことは、公平、良識、正当な手続きという全ての概念に反するものだ。歴史的な捜査のもと、(カバノー氏の)無実が証明されたと
米グーグルは8日、同社のソーシャルネットワーク「Google+(グーグルプラス)」上でソフトに欠陥があり、約50万人分の個人情報が流出したおそれがあると公表した。こうした事態を受け、グーグルは、消費者向けのグーグルプラスを来年8月末で閉鎖することも打ち出した。 グーグルは8日の発表で「消費者の期待に応えるグーグルプラスを作り、維持するのは、課題が大きい」として、「消費者向けのグーグルプラスを閉鎖する」と発表した。企業向けのサービスは残すという。 グーグルによると、欠陥が分かったのは今年3月。利用者が公開していない名前や電子メールのアドレス、職業、性別、年齢といった個人情報が、外部のソフト開発者から見られるおそれがあったという。 グーグルは、個人情報流出のおそれが分かった3月の時点ですぐにソフトの欠陥を修復した、と説明。「悪用された形跡がない」などとして公表しなかったとしている。 ただ、米国
韓国大統領府は8日、世界的な人気を誇る韓国の7人組男性グループ、BTS(防弾少年団)に文化勲章を授与すると発表した。世界の若者に「韓流」やハングルを広げたことを評価した。若手アイドルへの授与は異例という。 韓国の文化勲章は、金冠、銀冠、宝冠、玉冠、花冠の5等級に分かれ、BTSが受けるのは文化芸術への貢献を対象にした花冠。2008年には、ドラマ「冬のソナタ」に出演し日本の韓流ブームの火付け役となったことで知られる俳優のペ・ヨンジュンさんにも授与された。 大統領府は、決定に関わった李洛淵(イナギョン)首相が「外国の多くの若者が韓国語の歌詞を歌うなど、韓流の拡散だけでなくハングルの拡散にも貢献している」とコメントしたと明らかにした。 BTSは13年にデビューした平均年齢約23歳のヒップホップグループ。今年5月、韓国人として初めて米ビルボード・アルバムチャートで1位を記録した。活動を音楽以外にも広
英ソールズベリーでロシアの元スパイらが神経剤で意識不明になった事件で、英国の調査報道機関「ベリングキャット」は8日、英捜査当局が映像を公開した容疑者2人のうち、「アレクサンドル・ペトロフ」名のパスポートで英国入りした人物は、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)の医師だとする調査結果を公開した。 ベリングキャットによると、本名は「アレクサンドル・ミシュキン」で、知人の証言や、2001年にサンクトペテルブルクで発行されたパスポートのコピーなどから特定したという。医学生時代にGRUに採用された後、偽名のパスポートを与えられ、ウクライナにも複数回渡航していた。 英検察は容疑者の2人が今年3月、GRUの元スパイ、セルゲイ・スクリパリ氏を殺害しようとしてソールズベリーにある同氏の自宅のドアに神経剤ノビチョクを仕込んだとみている。2人が入国時に使ったパスポートの名前は「偽名の可能性が高い」としていた。 一
米グーグルは8日、同社のソーシャルネットワーク「Google+(グーグルプラス)」上でソフトに欠陥があり、約50万人分の個人情報が流出したおそれがあると発表した。こうした事態を受け、グーグルは、消費者向けのグーグルプラスを来年8月末で閉鎖すると発表した。 グーグルによると、欠陥が分かったのは今春だという。利用者が公開していない名前や電子メールのアドレス、職業、性別、年齢といった個人情報が外部から見られるおそれがあったという。グーグルは「消費者の期待に応えるグーグルプラスを作り、維持するのは、課題が大きい」として、「消費者向けのグーグルプラスを閉鎖する」と発表した。 米ウォールストリート・ジャーナルは8日朝、グーグルについて「大量の個人情報流出を今春分かっていたにもかかわらず、批判を恐れて公表せずにいた」と報道。米国内では、グーグルの情報隠しに厳しい批判も出ている。(サンフランシスコ=尾形聡
カリブ海の社会主義国キューバが、憲法を改正し、同性婚を認める方向へと踏み出した。これまで同性愛者は迫害されてきた。キューバ革命が目指した「全ての人が平等に扱われる社会」づくりは今なお進行形だ。(ハバナ=岡田玄) 「組織を追放された理由は『服装がおかしい』でした。でも着ていたのは周りの女性と同じブラウスやズボン。本当の理由は違ったのです」。ハバナに暮らす編集者のテレサ・フェルナンデスさん(58)は、教員養成学校での経験を厳しい表情で語った。 当時19歳。革命の理念に賛同し、共産党の青年組織「共産主義青年同盟」で活動していた。 同性愛を自覚したのは中学生のころ。自分自身が怖かったが、18歳の時、「女性を愛する方が幸せ」と確信した。 当時の同性愛者は隠れて出会いを見つけた。口のかたい店員のいる喫茶店。理解者の家でのパーティー。フェルナンデスさんも、そうして恋人と知り合った。 周囲にはレズビアンで
今年のノーベル平和賞に選ばれたイラクの少数派ヤジディ教徒のナディア・ムラド・バセ・タハさん(25)が8日、米ワシントンで記者会見した。受賞決定後、公の場で語ったのは初めて。ムラドさんは「声を上げられない人々の声になる。正義を求める人々のために立つ」と語り、性被害を受けた女性や迫害されている少数派のために、今後も活動していくと誓った。 ムラドさんは冒頭、今年のノーベル平和賞に選ばれたことについて、「大きな驚きで名誉」と述べた後、「同時に(自分が)大きな責任を(持つことを)はっきり理解した」と語った。 さらに、「私の目標は中東や世界で虐げられている少数派や性暴力の被害者を守ることだ」と説明。そのうえで「一つの賞や一人の人間では、その目的を達することはできない」と強調。「全ての政府に虐殺や性暴力の犯罪と闘うことを求める。世界は道徳的、法的な責任を持たないといけない。国益の前に人道主義がなければな
南米ペルーのユンガル村長選が7日、投開票された。返り咲きを目指したヒトラー氏(37)の立候補を、レーニン氏(32)が阻もうとしたことが国外でも報じられ、世界から一躍注目された選挙になった。注目候補のヒトラー氏は当選できたのか。 舞台はアンデス山中にある人口3千人ほどの小村・ユンガル村。2011~14年に村長を務めたヒトラー・アルバサンチェス氏が今回返り咲きをめざして立候補を表明したところ、レーニン・ウラジミール・ロドリゲス氏がヒトラー氏の立候補届を受理しないよう裁判所に訴えた。結局、訴えは「正当な理由がない」として選挙管理当局や裁判所に却下され、ヒトラー氏は立候補を認められた。 村長選にはヒトラー氏ら計6人が立候補した。ヒトラー氏は「善いヒトラー」をキャッチフレーズに選挙戦を展開。選挙管理当局によると、開票結果は投票率86・31%で、ヒトラー氏が得票率47・7%で当選した。 当選から一夜明
at work ドイツ大使館 何百年と続く国と国との関係も、まずは一人ひとりのつながりから。そんな地道な外交の現場を紹介します。 東京都港区にあるドイツ大使館の一室。日本人の同僚たちとパソコンの画面を見つめる表情は真剣だ。ドイツの最新情報をどう日本の人たちに伝えるか。雑談しながらアイデアを出し合う。広報や報道対応を担当する外交官、マリオ・クレープスさん(44)の日常だ。 「マースでございマース」 今年7月、3月に就任したばかりのハイコ・マース独外相の初来日を伝えるツイッターへの投稿に、ダジャレを入れたところ話題になった。滞在は1日だけだったが、河野太郎外相との会談や大学での講演など、動向を伝えるその後のツイートにまで、読者を引き寄せることに成功した。 「幅広い層の人に関心を持っ…
サウジアラビア国籍の著名ジャーナリストがトルコ・イスタンブールのサウジ総領事館に入館後に行方不明になった問題で、トルコ政府は9日、総領事館の捜索をサウジ政府が認めたと発表した。ロイター通信などによると、トルコの捜査当局はジャーナリストは総領事館内で殺害されたとみているが、サウジ政府は殺害を全面的に否定しており、両国の外交問題に発展する恐れが高まっている。 行方不明になっているのは、サウジ国籍のジャマル・カショギ氏。今月2日、結婚手続きのためにイスタンブールにあるサウジ総領事館に入ったまま行方が分からなくなった。トルコ外務省は7日、駐トルコのサウジ大使を呼んで、捜査への協力を求めた。 ロイター通信などによると、カショギ氏は総領事館内で殺害され、遺体は館外に運び出されたとトルコの捜査当局はみているという。エルドアン大統領は7日、「結論が出たらすぐに世界と共有する」と述べた。 サウジ総領事館前で
南米ブラジルで7日にあった総選挙で、上院議員選に立候補した労働党のジルマ・ルセフ元大統領(70)が落選した。投票直前の世論調査では、当選が確実視されていた。ブラジルでは、労働党が不景気や政界汚職の元凶との見方が強く、労働党への不満を象徴する結果となった。 ルセフ氏は軍事政権時代、民主化を求める活動家で、軍に逮捕されて拷問された経験もある。民政移管後は政治家として活動し、2011年にブラジル初の女性大統領に就任した。 だが、政府会計の粉飾疑惑で職務停止となり、16年、国会で弾劾(だんがい)裁判が開かれ、罷免(ひめん)された。この際、8年間の公職追放案も同時に採決されたが、可決に必要な3分の2の賛成が集まらず、政治活動の道が残され、ルセフ氏は今回の総選挙で政界復帰をめざしていた。(サンパウロ=岡田玄)
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