現在、50歳となった羽生善治。第一線で戦う気力は失わない。〈楽観はしない。ましてや、悲観もしない。ひたすら平常心で〉──かつて著書『決断力』の中で、「勝つ秘訣」についてそう語った天才棋士は、自身の変化をどう受け止め、前に進む気力を維持しているのか。将棋観戦記者の大川慎太郎氏がレポートする。(文中一部敬称略) * * * 将棋界のありとあらゆる記録を更新してきた羽生善治。最後の関門と言われているのが、タイトル通算獲得100期だろう(現在は99期)。今年5月に羽生は王位戦の挑戦者決定戦に進出した。勝てば藤井聡太王位(19)への挑戦権を獲得する一番で大きな注目を集めたが、豊島竜王に惜敗した。この敗戦をどう考えているのか。 「大事なのは、そういう位置まで行き続けることです。そうすれば、次のチャンスはまた来ます。結果は残念でしたけど、その繰り返しは大事だと思ってます」 ここでも「続ける」という言葉が