著: 小川紗良 水平線へ沈みゆく夕陽を、ただじっと見届ける。そういう時間を過ごしたことのある人が、この忙しない現代社会で、いったいどれほどいるだろう。仕事や、家事や、日々のあらゆるタスクを一旦放り投げてでも、見届けたい夕陽がある。「すみません、ちょっと夕陽がきれいだったもので」。そんな言い訳を、受け止めてもらえるようなゆとりがある。 この島国で、海や夕陽がきれいな町なんていくらでもあると思うだろう。それは実際にそうなのかもしれないが、鹿児島県阿久根市で見る夕陽には、やはりなにか他とは違う奇跡めいたものを感じてしまう。水面できらきらと連なる光の粒子たちが、次第に空との境を失って、気づけば残像を映したように星々が灯る。 便利ではなくても、人々の営みに惹かれて 子どものころの私にとって、阿久根は長期休みにたびたび帰るのどかな田舎町だった。国道線沿いを走る車の後部座席で窓を開け放ち、だだっ広い海を
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