日常の中で、人身事故による鉄道の遅延や運転見合わせのニュースを見聞きしたことがある人は少なくないだろう。「乗客にけがはなかった」「列車に最大〇時間の遅れが出た」といった情報が流れる中で、運転士の気持ちを考えたことはあるだろうか。事故のショックから体の不調に悩まされたり、離職したりするケースもあるという。事故を経験した元運転士に当時の心境をたずねるとともに、どのような心のケアが必要なのか専門家に聞いてみた。 首都圏の大手鉄道会社に勤めていた元運転士のKOHさん(39)=関東在住=は、2011年に人身事故を経験した。午後9時半ごろ、特急列車を運転していたところ、通過駅のホームに立っていた人が小走りに列車に駆け寄ってくるのが見えた。「あれ?」と思った次の瞬間、ぴょんと線路に。警笛を鳴らし、非常ブレーキをかけたものの、ドーンという大きな音を立てて、正面ガラスの下にぶつかった。 周囲の列車に緊急無線