東京一極集中の是正に向け、厚生労働省が首都圏の若者らを対象に都内で開いている地方創生関連イベントで、一部の参加者に現金が支払われていたことが分かった。イベントは人材派遣大手のパーソルテンプスタッフ(東京)への委託事業で、集客に関与した関係者が「現金を支払う条件で参加者を募り、派遣した」と本紙に証言した。国の地方創生事業で不適切な動員が明らかになったのは初めて。(前口憲幸)
東京一極集中の是正に向け、厚生労働省が首都圏の若者らを対象に都内で開いている地方創生関連イベントで、一部の参加者に現金が支払われていたことが分かった。イベントは人材派遣大手のパーソルテンプスタッフ(東京)への委託事業で、集客に関与した関係者が「現金を支払う条件で参加者を募り、派遣した」と本紙に証言した。国の地方創生事業で不適切な動員が明らかになったのは初めて。(前口憲幸)
政府が首都圏の1都3県と北海道の緊急事態宣言を継続すると決めた5月21日。首相の安倍晋三(65)はこの5都道県についても、4日後に解除の可否を判断する考えを表明した。 政府専門家会議のメンバーは安倍の発言に驚いた。政府から「1週間後の28日に判断する」と伝えられていたからだ。毎日のように政権幹部らと意見交換していた副座長の尾身茂(71)でさえ、判断の前倒しを知ったのは直前だった。 尾身は、経済再生担当相の西村康稔(57)に「前倒しするなら国民に説明する必要がある」と強い懸念を伝える。だが、政府側の意思は固かった。「(新規感染者の少なさは)いい数字が出ている。経済を考慮すれば一日でも早く解除したほうがいい」。政府高官は22日にこう話した。
新型コロナウイルスの感染対策を巡り、3月に厚生労働省クラスター(感染者集団)対策班の押谷仁・東北大教授から、東京都に示された感染状況の予測文書2通を、都が廃棄していたことが分かった。このうち1通は、5月下旬に本紙が都に情報公開請求した後に廃棄した。小池百合子知事は予測内容を「対策の参考にした」と述べており、廃棄によって感染拡大直前の政策決定過程が不透明になっている。(中沢誠) 都が廃棄したのは、押谷氏らが都内の感染者数などを予測・分析した2通の文書。都の説明では3月17日と19日に示された。17日文書では、現状の対策のままだと2週間後に都内で約1万7000人に増えると予測。都が提供した情報を基に、押谷氏らが精査した19日文書では、感染者数が約3000人に減った。 押谷氏はさらに精査し、都と意見交換した21日に、最終的な予測として「320人」を示した。小池知事は23日の記者会見で、21日文書
一九一八(大正七)年に世界でまん延した「スペイン風邪」が広がり、その後、離村へと追い込まれた集落が福井県大野市の山奥にあった。集落跡に立つ石碑には、住民の一割近くが死亡し、壊滅的な被害を受けたと克明に記されている。新型コロナウイルスの感染が広がる今、約百年前の惨状を繰り返してはいけないと、不住の地から訴えかけている。 (山内道朗) 集落は、大野市和泉地区の九頭竜湖南側に位置する面谷(おもだに)。同市教委文化財課によると、かつて、良質な銅を産出する鉱山町だった。幕末は大野藩の財政改革に寄与し、明治に入ると財閥の合資会社が鉱山経営を引き継ぎ隆盛を極めた。当時の大野市街地にはなかった電気も通り、「穴馬の銀座」と称されたほど。海外から安価な銅が輸入されるようになっていたところにスペイン風邪のまん延が追い打ちをかけ、鉱山は二二年に閉鎖。集落も解散した。 石碑はいつ、誰が建てたかはっきりしないが、集落
沖縄県名護市辺野古(へのこ)の米軍新基地建設を巡り、埋め立て予定海域で防衛省の想定に反し、海面下七十メートルより深い海底の地盤が「軟弱」であることを示すデータが検出されていたことが分かった。「七十メートルまで地盤改良すれば施工可能」という同省の設計の前提は、根底から覆る可能性が出てきた。同省は「業者が独断で行った調査で信頼性が低い」としてこの実測データを採用せず、調査した事実すら伏せていた。 (中沢誠) 海底の軟弱地盤の存在は着工後に判明し、粘土層は最深部で海面から九十メートルにまで達すると指摘された。防衛省は地盤改良の必要から設計変更の準備を進めているが、工事の助言を得る有識者会議にもこのデータを示していなかった。 「軟弱」を示すデータが検出されたのは、軟弱地盤が九十メートルまで達していると指摘された「B27」地点。防衛省から委託された業者が現場で土を採取し、地盤強度を計測。その結果によ
アスファルトをはがしたら、線路と石畳が出現-。東京都千代田、文京区境の神田川にかかる「お茶の水橋」の補修工事現場で戦時中に廃止された都電の遺構が見つかった。ネットでも話題となり、鉄道ファンらでにぎわっている。二十九日から撤去が始まる予定で「レールは公園などで保存を」との声も出ている。 (梅野光春、小松田健一) 工事を実施する千代田区によると、お茶の水橋は一八九一年にかけられ、一九二三年の関東大震災で焼失。三一年に今の橋が完成した。都交通局の資料によると、〇四年に橋を渡る路線が開通し、太平洋戦争で戦況が悪化した四四年まで運行されたらしい。 その後、線路はアスファルトで覆われたが、昨年十月、橋の路盤強化工事でアスファルトをはがしたところ、再び姿を現した。長さ一メートル前後のレールに製造年とみられる「1930」などの字が記されていた。今月二十日、工事範囲を広げると五十五メートルにわたりレールと敷
保育士が大量退職する例が相次いでいる。本紙が都の23区の区役所にアンケートしたところ、2019年3月末の年度替わり前後に5人以上が辞めた例が少なくとも17園に上り、保育士全体の3割以上が辞めた園は合計10カ所、半数以上が辞めた園も4カ所に上った。だが、ほとんどの区が退職状況を網羅的に調べておらず、親への情報提供もしていない。専門家や保護者団体は実態把握と情報公開を求めている。 (渥美龍太) アンケートは全二十三区に電話とメールで実施。五人以上の保育士が相前後して辞めた例を聞いた。 文京区では十人中の八人が辞めた園があり、別の園では十二人中八人が辞めていた。北区でも十二人中八人が辞め、杉並区でも十二人中七人が辞めていた。 背景にあるとみられるのが待遇の悪さだ。内閣府の調べでは保育士の年収は正規職員でも平均三百六十万円。全産業の正社員の平均値・五百万円に比べると三割低い。長年勤めてもほとんど上
厚生労働省が省内の全部局に、根本匠厚労相の指示として「非正規」や「非正規労働者」という表現を国会答弁などで使わないよう求める趣旨の文書やメールを通知し、本紙が情報公開請求した後に撤回したことが分かった。同省担当者は撤回の理由を「不正確な内容が散見された」と説明。根本氏の関与はなかったとしている。 (中根政人) 厚労省雇用環境・均等局によると、文書は「『非正規雇用労働者』の呼称について(周知)」という件名で四月十五~十六日に省内に通知。当面の国会答弁などの対応では、原則として「有期雇用労働者」「派遣労働者」などの呼称を用いるとした。「非正規雇用労働者」の呼称も認めるが、「非正規」のみや「非正規労働者」という表現は「用いないよう留意すること」と注意を促している。 各部局に送信したメールには、同じ文書を添付した上で「『非正規雇用』のネーミングについては、(中略)ネガティブなイメージがあるとの大臣
【ワシントン=共同】サッカーの女子ワールドカップ(W杯)フランス大会で、米国は七日(日本時間八日未明)、連覇を懸けてオランダとの決勝戦に臨む。米代表選手たちは男女の賃金格差是正や性的少数者(LGBT)の権利擁護などを訴えて社会に一石を投じ、「政治的なアスリート」(米作家)としても注目を集める。トランプ政権も批判し、「語る前に、まず優勝すべきだ!」とトランプ大統領を激怒させたほどだ。 その中心にいるのは、日本代表「なでしこジャパン」とも何度も対戦したラピノー選手(34)。同性愛を公言し、白人だが人種差別に抗議する黒人アスリートにいち早く賛同した「社会正義を目指す活動家」(CNNテレビ)だ。W杯で優勝して招待されても「ホワイトハウスには行かない」と表明するなど、米社会の分断をあおるトランプ氏への不満を隠さない。 反発したトランプ氏は即座に「国やホワイトハウス、国旗に敬意を払うべきだ」と攻撃した
同性愛者ら性的少数者(LGBT)などへの支援策を検討する茨城県主催の会合で、県医師会の満川(みつかわ)元一副会長が「性的マイノリティー(少数派)の人に、マジョリティー(多数派)に戻ってもらう治療はないのか」と発言した。性的少数者の当事者らは「ショックだ」と不快感を示している。 (鈴木学) 会合は、性的少数者のカップルを公認する「パートナーシップ制度」を含め県ができる支援策を検討する目的で、当事者や医師、弁護士など計十人の委員が六月まで四回開く予定。発言は四月二十五日の初回で、委員それぞれが考え方を述べていた際にあった。 満川副会長は「性的マイノリティーの人に、性的マジョリティーに戻ってもらう治療はないのかという思いはある」と発言し、「少子高齢化の時代、産婦人科医としては一人でも多くの子どもをつくっていただきたい。戻っていただけないかと医者としての思いがある」とした。 この発言に、当事者で、
令和への改元を控え、「平成経済」を知るための重要な指標の一つである「賃金伸び率」の検証が、今年一月に発覚した政府の統計不正のためにできなくなっている。政府が毎月勤労統計の集計で不正を行っていた期間の資料を廃棄したことで、八年分の賃金が分からなくなったからだ。公表された資料には空欄が並ぶという、異様な状況となっている。 (渥美龍太) ルールでは全数調査をしないといけない東京都分の大規模事業所を、厚生労働省が二〇〇四年に勝手に抽出調査に切り替える不正を始めたため、以降の調査結果が実態より低く出るずれが生じていた。これにより、延べ二千万人超が雇用保険などを過少に給付されていたことが分かった。 問題発覚後、厚労省は一二年以降の結果を再集計して本来の数値を再現したが「〇四~一一年分は調査票などの資料を廃棄・紛失していて再集計ができない」(厚労省の賃金統計担当者)ため、公表資料を空欄とした。この空欄部
モスクワ郊外で3月、「毎日子どもたちとトレーニングしている。まだプロレスもできるよ」と笑うザンギエフさん=栗田晃撮影 今から三十年前、平成の幕開けとともに、日本のプロレスに参戦したソ連のレスラーたちがいた。ペレストロイカ(改革)が後押ししたスポーツ交流。秘密のベールに覆われていた社会主義の大国からやってきた選手たちは、日本のファンを大いに沸かせた。来日した選手の一人、ビクトル・ザンギエフさん(57)が当時の思い出を語った。 (モスクワ・栗田晃) 待ち合わせの場所に一九〇センチ近い大男が立っていた。たくましい胸板は往年の面影を残すが、笑顔は柔和だ。現在はモスクワ郊外の町で、アマチュアレスリングの指導に当たるザンギエフさんは「日本の文化も食べ物も、何もかも大好きだった。また行ってみたいな」と懐かしんだ。
総務省統計委員会の西村清彦委員長が多忙を理由に国会審議に協力しない意向を示したとする文書を、総務省職員が西村氏に無断で作成し、野党に示していたことが二十五日、明らかになった。西村氏は不快感を示し、石田真敏総務相は衆院予算委員会で陳謝した。 文書は総務省が二十二日に衆院総務委の野党理事らに配布した。西村氏本人の弁として「統計委員長は非常勤の時間給のアルバイト公務員でしかなく、私は本務として研究教育、企業関連の取締役や顧問の仕事を抱えている」と説明。「これ以上、本務に支障をきたす形では協力できない」と国会審議への出席に応じない考えを示した。署名や日時は記していない。 これに対し、西村氏は二十五日、総務省を通じて野党側に書面で「そのような『文書』を提出するように指示したことはない。極めて遺憾だ」と伝えた。国会審議については「重要性は強く認識している。研究教育等の本務に支障のない限りにおいて、国会
厚生労働省が今年から賃金の算出方法を変えた影響により、統計上の賃金が前年と比べて大幅に伸びている問題で、政府の有識者会議「統計委員会」は二十八日に会合を開き、発表している賃金伸び率が実態を表していないことを認めた。賃金の伸びはデフレ脱却を掲げるアベノミクスにとって最も重要な統計なだけに、実態以上の数値が出ている原因を詳しく説明しない厚労省の姿勢に対し、専門家から批判が出ている。 問題となっているのは、厚労省が、サンプル企業からのヒアリングをもとに毎月発表する「毎月勤労統計調査」。今年一月、世の中の実態に合わせるとして大企業の比率を増やし中小企業を減らす形のデータ補正をしたにもかかわらず、その影響を考慮せずに伸び率を算出した。企業規模が大きくなった分、賃金が伸びるという「からくり」だ。 多くの人が目にする毎月の発表文の表紙には「正式」の高い伸び率のデータを載せている。だが、この日、統計委は算
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