「とにかく史料の散逸を防ぐことが最優先されるべきだと考えたのです。その一心で、国立化されたハンセン病資料館に移管したのに、その史料が存在しないなどということがあるのでしょうか。当時の関係者であれば、誰もが知っているはずなんですが……」 かつて、ハンセン病の史料の整理に当たった関係者が、そうつぶやいた。 国立療養所多磨全生園(東京・東村山市)の敷地内にある国立ハンセン病資料館。そこに保管されているはずの戦前・戦中のハンセン病患者らの処遇を示唆する多数の史料が所在不明となっている。 “消えた”のは「癩患者徴兵検査書類」「収容患者兵事関係書綴」などの史料。いずれも、これまで表立っては知られていなかったハンセン病の療養所内がどのように戦時体制と接点をもっていたのかを検証するうえで重要な1次史料と思しきものばかりである。 ハンセン病患者に対するかつての隔離政策を問い、国を相手取った「ハンセン病違憲国
