お笑い芸人の出世の歩みは、しばしば戦国武将に例えられる。激しい競争を勝ち抜いて、自分の名前が付いた冠番組を獲得した芸人は「一国一城の主」となり、それが高視聴率をキープして、レギュラー番組が際限なく増えていく波に乗り始めると、「天下を取った」と言われるようになる。現在では、テレビに出る芸人の頭数も増えて、若手がゼロからスタートして天下を取ることは容易ではなくなってきた。 1980年代後半から90年代前半のバラエティー業界を振り返ると、そこには何人かのスタープレーヤーがいた。その中でも、女性芸人で唯一、「天下を取った」と言われていた人物がいた。それが、山田邦子である。 一時期の彼女の勢いにはすさまじいものがあった。89年に『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)が終了した後、そこに出ていた芸人と、携わっていたスタッフの遺伝子は、いくつかの番組に引き継がれた。その1つが、ひょうきんメンバーの紅一