「私、この本知っている。小学生の頃、図書館で借りて読んだんだ」 「へぇ、そうなんだ。どんな話なの?」 「いたずら好きの女の子が出てきて、森の中で迷子になっちゃうんだけど、熊の家族が暮らしている家を見つけてね……」 カップルが、絵本片手に思い出話に花を咲かせている横で、自分の胸元ほどの高さの階段を、えんやとよじ登って来た小さな女の子が、何やら興味津々に視線の先の棚を見つめている。そのあとを追って、母親とその友人らしき女性が、「わぁ、ここ本屋さんなんだぁ」と言いながら、楽しそうに水色の車に乗り込んでくる――。 そう、ここは本屋さん。名前は「BOOK TRUCK」(ブックトラック)。見た目は水色のトラックだけれど、本と棚をセットすれば、いつでもどこでもお店を構えられる、移動式本屋。運転手兼店主は、三田修平さん。「どうぞ、中に上がってくださいね」と、足を止めたひとたちに、気さくに声をかけるお兄さん