文/森本あんり(国際基督教大学・学務副学長) オバマはムスリム!? アメリカでは、教会の説教師は政治家のように語り、政治家は説教師のように語る、と言われる。しかし、近代の大統領でオバマ氏ほど自分の信仰について多くを語った大統領はいない。それは、彼ほど自分の信仰について執拗に尋ねられ、疑問を投げかけられた大統領もいないからである。 バラク・フセイン・オバマは、ケニア出身でムスリム系の父をもち、ハワイに生まれ、インドネシアのムスリム社会で育った。母方はカンザス州の伝統的なキリスト教系家庭の出身だが、オバマ氏がキリスト教徒になったのは成人して後、1985年にシカゴの地域組織化活動に携わってからのことである。 彼は、黒人教会が歴史的に果たしてきた役割の大きさを知り、シカゴのプロテスタント教会で洗礼を受けた経緯を、選挙の前にも後にも繰り返し語ってきた。 にもかかわらず、彼がイスラム教徒だと思っている