1984年は、東映動画のふたつの話題作『北斗の拳』『とんがり帽子の メモル』が放映開始された年である。 『北斗の拳』は「ジャンプ」アニメの1本であり、原作は武論尊と原哲夫。シリーズディレクター(SD)には『アラレちゃん』で実力を認められた芦田豊雄が、キャラデザには竜の子プロ作品で秀逸なアクションを披露してきた須田正己が抜擢された。スプラッター的ともいえる暴力描写を透過光を駆使してソフトに処理し、ギャグと紙一重のシリアスさでこなす演出が斬新で、主演・神谷明によるエキセントリックな絶叫も話題となった。 『メモル』は同社久々のオリジナル作品。若手の名倉靖博による繊細なキャラクター原案、ベテランの土田勇による水彩画風の美術デザインが理想的な連携を見せた点でも稀有な成功例となった。新旧世代の共演は演出陣にも見られ、SDの葛西治のもと、81年に入社した佐藤順一、貝沢幸男がフレッシュな感性で名作を生み出