批評家の浅田彰さんが昭和58年、26歳の若さで出した思想書としては異例のベストセラーであり、いわゆる「ニュー・アカデミズム」ブームのきっかけともなった一冊です。刊行当時、私は高校3年生。その年に読んで、典型的な理科系だったのが、文系へと志望を変更するほどの衝撃を受けた。この本に出合わなければ、編集者にはなっていなかったとも断言できます。 20世紀の人文学に大変動を起こした仏人類学者レヴィ=ストロースらの「構造主義」の考え方を再定義した上で、ポスト構造主義への展望を独自に示した論考です。その過程で、仏哲学者ラカン、ドゥルーズ、ガタリらの思想も明快に論じられる。「千の否のあと大学の可能性を問う」との副題が添えられた「序に代えて」では、〈自ら「濁れる世」の只中をうろつき、危険に身をさらしつつ、しかも、批判的な姿勢を崩さぬこと〉が提唱されます。その後に〈シラケつつノリ、ノリつつシラケること、これで