前田智徳ロングインタビュー 「あなたがいたから、プロで24年やれました」 元広島スカウト宮川孝雄氏に捧ぐ 来た球を無心で打つーー。究極の打法を求め続けた職人には、球界に尊敬する恩師がいた。大けがを境に、ガラスの天才打者と惜しまれた広島OBの前田智徳が、今はなき人への思いを語る。 涙が止まらなかった 微笑む宮川さんの遺影がすぐに涙でゆがみました。1月13日、北九州市内の斎場で執り行われた葬儀で、宮川さんがスカウトした北別府(学)さんや、現監督の緒方(孝市)さんの弔辞の間、僕も心の中で宮川さんと、初めて会った時のことからずっと話し続けました。 葬儀で初めて会ったアマチュア球界の方から、こんな昔話を伺いました。 「前田さんが甲子園に出たとき、宮川さんは隣でこうつぶやいていたんです。『とにかく、打つな。頼むから打つな』と。甲子園で打つとカープ以外の球団からも注目される。どうしても欲しかったんでしょ