サタンというと、キリスト教における悪魔のトップで、およそ最悪の存在という印象がある。かつて高位の天使であったが、人もしくはイエスが神に愛されたことに嫉妬し、神に反逆して堕天した存在とされている。旧約聖書創世記で、エデンの園でイブを誘惑し、神が食べるなと命じた知恵の実を食べさせた蛇が、後にサタンと同一視された。蛇は神の創造物の中でも知恵のあるものだったのだが、これが人を惑わせて神に背かせたことで、地を這い塵を食らう屈辱を押し付けられ、人の女に恐れられ、男にかかとで踏まれる卑しい存在に落とされた。これがのちに「天使が堕ちた物語」と重ねられ、さらに「蛇の強いやつ」的にドラゴンという空想的動物に投映され、西洋における「ドラゴン=悪」の図式につながる。現代人の視点で創世記を読むと、あれはどう見ても人間が蛇を忌避してきた歴史を説明する普通の起源説話で、あの蛇は別にサタンなんかじゃないと思うのだけど。