前回ご紹介した小説家、川上未映子の妊娠・育児エッセイ『きみは赤ちゃん』(文藝春秋)には、同業者である夫、阿部和重への不満がかなりストレートに綴られている。たとえばこんな具合。 妊娠25週目のおなかの赤ちゃんがどんな状態か、知ってる? と聞いてみた。(中略)でも、あべちゃんは知らなかった。わたしはそれにたいして急激に怒りがこみあげた。というのも、そういうのはネットで検索すればいくらでも知ることのできる情報であり(中略)その時間はたんまりあるはずなのに(中略)ただの一度も検索をしたことがない、ということに、わたしはまじで腹が立ったのである。これはたんに興味がないだけの、証拠じゃないか! この文章を読まなかったら、自分が同じ境遇に立たされたときに、妻からまったく同じ怒りを買っていただろう、と思って胸が痛くなった。そうした言葉はいくつもあった。たとえば、阿部が初めて自分の子供と対面したときの記述。