実際の労働時間にかかわらず一定の時間働いたとみなす「裁量労働制」の対象拡大を巡る国の議論が大詰めを迎えている。経営側は「制度の満足度は高い」として拡大を求める一方、適用者の1割近くが「過労死ライン」の労働時間に達するなど運用面の危うさから慎重論は強い。裁量制で働いた当事者は「働かせ放題にできる制度では、もう働きたくない」と話した。(畑間香織)
三菱電機の男性社員5人が長時間労働が原因で精神障害や脳疾患を発症して2014~17年に相次いで労災認定され、うち2人が過労自殺していたことがわかった。5人はシステム開発の技術者か研究職だった。3人に裁量労働制が適用されており、過労自殺した社員も含まれていた。労災認定が直接のきっかけではないとしながらも、同社は今年3月、約1万人の社員を対象に適用していた裁量労働制を全社的に廃止した。 16年11月、情報技術総合研究所(神奈川県鎌倉市)に勤めていた研究職の30代の男性社員が、長時間労働が原因で精神疾患を発症したとして労災認定され、本人がその事実を公表した。柵山正樹社長(当時、現会長)は17年1月の記者会見で「二度とこのような事態が起こらないように取り組む」と陳謝し、労働時間の正確な把握に力を入れる考えを示していた。朝日新聞の取材で、これ以前にも労災が2件、17年にも2件認定されていたことが新た
安倍晋三首相は14日午前、衆院予算委員会の集中審議で、裁量労働制に関する1月29日の答弁を撤回した。首相が答弁の根拠にした厚生労働省の2013年度の調査に不自然な点があると野党が追及していた。自民党の江渡聡徳元防衛相が「調査を一度、白紙に戻したらどうか」とただしたのに対し、首相は「引き続き精査が必要なデータを基に行った私の答弁は撤回するとともに、おわびしたい」と述べた。 首相は1月29日の衆院予算委で、働き方改革関連法案による裁量労働制の対象拡大の意義を説明した際、「厚労省の調査によれば、裁量労働制で働く人の労働時間の長さは、平均的な人で比べれば一般労働者よりも短いというデータもある」と述べた。
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