夫の霊は多襄丸との決闘の敗北を隠したくて、 潔く切腹して死んだと証言した。 妻を目の前で強姦された大失態も隠したかったし 妻に「(何故自害しない?だって!多襄丸を)この男を殺してから自害しろというなら男らしい夫だが(太刀も取らずに妻に自害を迫るのは卑怯な夫だ!決闘して多襄丸を殺してから言い直せ!)」 と決闘での決着を迫られたことも、隠したかった。 そして、女がついた嘘も、決して死刑が怖くてついた責任逃れのずるい嘘とは言えない。 芥川の『藪の中』は、3人が3人とも死罪を求めて嘘をついた不可解な事件 その矛盾する証言を並べたところで終わってしまう。 彼らは一体何を隠し、殺人以上の如何なる罪を隠さんとして偽証したかは教えてくれない。 女の嘘も夫の嘘と同じで、決闘の末に夫が無様に負けて殺された という点を隠したくて決闘が行われた真実を証言せず、 山賊に身体を奪われながら自害しなかった妻としての恥を