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ブックマーク / morinonote.hatenablog.com (12)

  • 夏 霞 - 放課後の綴り方

    www.youtube.com 夏 霞(歌詞) 遠く夏霞の彼方 君の笑顔溶けて 宵待ち 篝 夕月 たった一度の夏がゆく 出逢いは 皐月待つ花橘香る径 若すぎた さよならの気配にも気づかずに プールサイドの煌きも 浴衣姿の後れ毛も 全てはひと夏の恋物語 【自作解説】 Cubase &ボーカロイド(初音ミク)によるささやかなラブソングです。歌詞に、和歌の一節をフィーチャーし、日の夏を描いてみました (^^)v

    夏 霞 - 放課後の綴り方
  • 試合 - 放課後の綴り方

    しあさって しあいだって しあいったって まけんだって まけるって ひあいだって きあいだって なえんだって そんなときも あるんだって 【自作解説】 谷川俊太郎氏の詩集『ことばあそびうた』所収の詩「だって」に倣って作った、ほろ苦人生讃歌です。

    試合 - 放課後の綴り方
  • 万葉の贈答歌/君が行く海辺の宿に - 放課後の綴り方

    君が行く海辺の宿に霧立たば我が立ち嘆く息と知りませ 『万葉集』巻十五冒頭に収められた遣新羅使人の贈答歌の中の一首*1。天平八年(西暦736年)六月、当時、関係が悪化していた新羅国に向けて難波を発った一行は、翌九年三月、予定を大幅に遅れて帰朝しますが、新羅国との交渉においては捗々(はかばか)しい成果を挙げることもできず、大使の安倍継麻呂は、帰途、対馬で没するなど、その船旅は文字通り苦難の連続だったようです。 上掲の一首は、一行に加わった夫に贈った若の惜別の歌です。ただでさえ危険な船旅。しかも旅の目的に思いを致せば、これが今生の別れになる可能性も否定できなかったはずです。 彼女は、愛する夫がこれから泊まるであろう海辺の湊(みなと)に朝な夕な立つ霧に、万感の思いを託して歌います。この歌を受け取った夫は、吾妹子(わぎもこ)*2への愛しさで胸がいっぱいになったことでしょう。 最愛のからこんなにも

    万葉の贈答歌/君が行く海辺の宿に - 放課後の綴り方
  • 掌編小説「ユニゾン」 - 放課後の綴り方

    空いっぱいに燃え上がった春の夕焼けが、街中の玻璃や舗道や街路樹を驟雨のように濡らしていく。文字通り春夢のように儚い光芒の後、街衢は素早く夜の色に変わっていった……。 仕事帰りの道すがら、とある児童公園に目を遣ると、園地の奥の暗がりで鞦韆がひっそり揺れていた。漕ぎ手は全くの影と化し、その正体は判然としない。僕は静かに立ち止まり、影を見据えて耳を澄ました。 と、ざざっと細かい砂利を踏みしめる音がして、闇の向こうの揺動がぴたりと止んだ。影はそのまま息を潜めて、此方の気配を窺っている。動きが止まったことで焦点が定まり、漕ぎ手の姿が徐々にはっきり見えてきた。 まずは白く小さな面差しと同じく白い膝小僧。それから春色シャツワンピ。ストレートっぽい黒髪が背後の闇に溶けている。小柄であるが幼女ではない。九歳以上十二歳未満といったところか。 互いにじっと見つめ合うこと、十数秒。先に動いたのは僕だった。 まずは

    掌編小説「ユニゾン」 - 放課後の綴り方
  • 掌編小説「心音」 - 放課後の綴り方

    「……番線に、七時二四分発特別快速○○行きが参ります。黄色い線の内側に下がってお待ち下さい」 聞き慣れた駅の構内アナウンスが遠くに聞こえ、私はうっすらと目を開けた。いつの間にか居眠りをしていたらしい。七時二四分発○○行きと言えば、通勤の際、いつも使っている列車である。乗り遅れたらやっかいだ。 急いで起き上がろうとした私は、そこでようやく、自分が駅のプラットホームのベンチに横たわっていることに気がついた。 朝のラッシュ時にも関わらず、私のいるホームは閑散として、人影もまばらである。一方、向かいのホームは、間もなく到着する特別快速を待つ人々で溢れ返っていた。これが夕方のラッシュ時であったら、ホームの様相はまるで逆になっているはずである。 この状況から察するに、私はここで一夜を過ごしたらしい。恐らくは、仕事帰りに何らかの理由で引っかかったのだろう。酒に飲まれた記憶はないのだが、「記憶に無い」こと

    掌編小説「心音」 - 放課後の綴り方
  • 掌編小説「保健室の彼女」 - 放課後の綴り方

    夏休みが明け、二学期が始まっても、菜々の保健室登校は続いていた。南校舎の前庭として設られた、今はコスモスが千々に咲き乱れる花壇の後ろを抜け、くすんだ灰色の外扉を開けて、保健室のほの白い闇の奥に消えるまで、もはや誰一人として彼女を気にかける者はいない。 菜々の保健室登校は一学期の後半から始まった。もっとも、それまでのひと月ほどは完全な不登校状態だったわけで、その点からすれば、多少の進展があったと言えないこともないのであるが。 不登校のきっかけは、新学年になって早々、唐突に始まったいじめにあった。いじめの原因については、もはや当事者の誰も明確に指摘することはできまい。そもそもが、いじめに走った側の誤解だったのだから。 しかし、誤った情報をリークした元・友人らは、自らの勘違いを訂正することなく陰に隠れて、シカト・嫌がらせの輪は一気にクラス全体へと広がっていった。 担任は、保健教諭とも連携して、何

    掌編小説「保健室の彼女」 - 放課後の綴り方
  • 与謝蕪村の豊穣なる詩的世界 - 放課後の綴り方

    松尾芭蕉と与謝蕪村 江戸時代の俳人といえば、何と言っても松尾芭蕉が有名です。有名なだけでなく、それまで言葉遊びや滑稽を旨としていた俳諧連歌及び発句(=今でいう俳句)を、第一級の地位にまで押し上げた最大の功労者であり、まさに「俳聖」の名にふさわしい人であると言うことができます。 江戸時代を通して、「芭蕉に帰れ」と言うスローガンは繰り返し叫ばれたようですが、中でも、生涯を通してその信念を貫いた俳人のひとりが与謝蕪村です。 蕪村は芭蕉を大変尊敬しており、芭蕉の作品に倣って作られた句も少なくありません。二組ほど例を挙げておきます。 この道や行く人なしに秋の暮   芭蕉 門を出れば我も行く人秋の暮   蕪村 菊の香や奈良には古き仏たち   芭蕉 秋の燈やゆかしき奈良の道具市  蕪村 正岡子規と与謝蕪村 蕪村は、明治時代に短詩型文学の革新を訴えた正岡子規が大いに持ち上げたところから、一時は芭蕉以上に評

    与謝蕪村の豊穣なる詩的世界 - 放課後の綴り方
  • 掌編小説「葦原」 - 放課後の綴り方

    うっとりと流れるあの川の岸辺を離れて、どれだけの時が経ったのだろう。目の前に立ちふさがる青葦をがむしゃらに掻き分けながら、健次は思った。 最初はほんの悪戯心だった。兄の康太を追いかけて、春の日差しの中にぽっかり浮かんだあの白い河原から、永遠のように広がるこの葦原に飛び込んだのは。 前方から聞こえる葦の葉擦れの音を追いかけながら、健次は兄の後を追いかけているつもりだった。 「康ちゃん、康ちゃん」 だから何度も兄の名を呼んだ。しかし、兄は戻ってこなかった。健次は兄と逸れたことを認めざるを得なかった。 青葦の間を、泳ぐように、喘ぐように進みながら、健次はふと背後に迫る何者かの気配を感じた。思わずぎょっとして立ち止まると、追跡者も足を止め、こちらを窺うように息を潜めた。 追っ手の隙をつくように、健次は再び走りはじめた。前方から聞こえる葉擦れの音を追いかけ、背後から追いすがる何者かの気配から逃れよう

    掌編小説「葦原」 - 放課後の綴り方
  • ヒッチハイカー - 放課後の綴り方

    軽トラックの荷台に、自分の物とも他人の物ともつかぬ荷物を積み上げて、霧深い海坂を滑るように下っていくと、道の端に佇み、親指を立てて合図を送る、陰画のような人影が視界を掠めた。 急ぎブレーキを踏みこんで、広い路肩に車を寄せる。 やがて、左手のサイドミラーに映り込んだ昏い乳色の霧の中から、青いリュックサックを背負ったひとりの少年が立ち現れた。 「乗せてくれませんか?」 「ああ、いいよ。何処まで?」 「はい。この霧が晴れるところまで」 助手席に乗り込んできた少年は、青いリュックを足許に置き、シートに深く腰かけた。見ればずいぶん痩せている。全身をしとどに濡らし、微かに震えてもいるようだ。 「寒くないか?」 「はい、大丈夫です」 「まあ、これを使え」 片手でハンドルを握ったまま体を捻り、座席の後ろの狭いスペースに押し込んだ小さな旅行鞄から、下ろしたてのフェイスタオルを引っ張り出して少年の膝に乗せてや

    ヒッチハイカー - 放課後の綴り方
  • 鳥の俳句 / 大瑠璃 - 放課後の綴り方

    囀りと地鳴き 鳥の鳴き声は、大きく2種類に分けられます。繁殖期に、縄張りを宣言し、雌に求愛するための「囀(さえず)り」と、それ以外のコミュニケーションツールとしての「地鳴き」です。 日人に最も馴染みの深い囀りは、ウグイスの「ホーホケキョ」でしょう。もちろん、実際に「ホーホケキョ」と鳴いているわけではないのですが、ウグイスの場合は、この「法華経」という聞き做し(注1)があまりにも浸透しすぎて、そう鳴いているとしか思えません(笑)。 ちなみに、ウグイスは留鳥なので、繁殖期以外の鳴き声も比較的多く耳にすることができます。ウグイスの場合はこれを「笹鳴き」といい、俳句では冬の季語になっています。文字通り、藪の中で「チャッ、チャッ」と地味に鳴きます。 水原秋桜子の一句 一方、夏鳥は、春から初夏にかけて、繁殖のために南方から渡ってくるだけに、ほとんど囀りしか印象に残らない場合が多いですね。特に、囀りが

    鳥の俳句 / 大瑠璃 - 放課後の綴り方
  • 鎮魂歌緑陰の径濡れしまま - 放課後の綴り方

  • お迎え天使 - 放課後の綴り方

    深夜午前一時。照明を落とした五階の内科病棟はひっそりと静まり返っていた。エレベーター脇の壁面に掲示された案内板で目指す病室を確認した私は、人気の絶えた廊下を跫音立てず歩いていった。 足許に灯の投げ出されたほの暗い廊下をしばらく進むと、左手に業務用エレベーターのためのこじんまりとしたホールが現れた。エレベーター向かいの壁際に、四人掛けの長椅子が二脚並べて据えられている。 私が目指す512号室は、その少し先の個室であった。ネームプレートで氏名を確かめ、黒い礼服のポケットから取り出した懐中時計に目を落とす。 ふむ。約束の刻限にはまだ少し間があるようだ。その時が来るまで、先ほど見かけたエレベーターホールの長椅子に座って待つことにしよう。 廊下の角から顔を覗かせた私は、ギョッとして立ち竦んだ。ついさっきまで無人だったエレベーターホールに、思いがけずひとりの少女を見出したからだ。 少女は、二脚並んだ長

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