メジャーからマイナーまで歴史上の人物の手堅い評伝シリーズで知られる吉川弘文館人物叢書、2015年2月の新刊が宮本武蔵だったので早速読んでみた。 現在、一般的に知られている宮本武蔵像は江戸時代に作られた真偽不明の武蔵の伝記類をベースにし、歌舞伎等の大衆演劇や小説、映画、ドラマ、マンガなど様々な創作によって形作られていて、ほぼ虚構といっていい。一方で、では史実の宮本武蔵がどのようなものかというと、これまた残された史料が数少なく非常に曖昧でよくわからない。実際、生年月日も出身地も生い立ちもなにもかも、諸説あってよくわからないのである。本書は、そのよくわからない宮本武蔵像に、虚構を出来る限り排して史料から迫ったもので、とても興味深く、面白かった。 宮本武蔵は天正十年(1582)か天正十二年(1584)に美作か播磨で兵法者新免無二斎の実子または養子として育ち、無二斎に武術を学んで十三歳から二十八、九