津波で被災した岩手県釜石市民の体験を語り継ぐ「記憶館」をつくろう――。壊滅的な被害を受けた大町商店街振興組合の小田島圭司理事長(64)が商店街の仲間に呼びかけている。がれきの中から見つけ出した、それぞれの店の「宝物」を持ち寄って展示し、記憶を残す構想という。 「これはメガネ屋の命なんです」。レンズに傷がつき、縁が潮でさびだらけになった検眼鏡を大切そうに小田島さんはかざした。自分のメガネ店は2階まで波をかぶって全壊した。がれきの山からようやく掘り起こせたのは、検眼鏡とレジの小銭だけだった。 同商店街にあった53店舗はすべて使い物にならない。被災後、経営者の無事が確認できた店舗は26に過ぎない。 3月11日、地震後の津波警報に当初、「どうせまた、ひざまでの高さぐらいだべや」と高をくくった。周りの店主に促され、慌てて裏手の山に逃げた。振り向くと、店は軒並み波にのみ込まれた。商店街中心の交差点で三