丸梅の名前を知ったのは、確か子母澤寛の『味覚極楽』であった。 とある珍しい魚を出す店は東京では数軒しかないという話で 丸梅はその1軒であった。ような気がするが他の本かもしれない。 その後も食べ物関係の随筆などを読むうちに、丸梅は有名な料理店で 一日一組しか客を取らず、名物女将がいるということが分かってきた (この辺りの過程はもう忘れた)。 店は四谷にあり、女将は井上梅というらしいので、「四谷 丸梅」 とか「丸梅 井上梅」でぐぐってみて、女将の聞き書き本の存在を知る。 聞き書き本は『運鈍根 井上梅女聞き書き』といって、私が買った のは講談社文庫。単行本は昭和46年産業能率短大出版。 扇谷正造の聞き書き、丸梅を訪れた有名作家の文章、徳川夢声との対談、 婦人雑誌に掲載された丸梅の記事の転載など、当時の丸梅の人気ぶり が分かって面白い。 目次を見て「このタイトルは見たことあるような……」と本棚を