2023年9月1日、東浩紀の新著『訂正可能性の哲学』が刊行されます。本書は『観光客の哲学 増補版』の姉妹編でありながら、デビュー作『存在論的、郵便的』(新潮社)で東自身が積み残した問いへの25年越しの応答でもあります。発売を記念して、本書のために書き下ろされた「おわりに」全文を無料公開いたします。 哲学とはなにか、と問いながらこの本を書いた。本書の主題である「訂正可能性」は、その問いに対する現時点での回答である。哲学とは、過去の哲学を「訂正」する営みの連鎖であり、ぼくたちはそのようにしてしか「正義」や「真理」や「愛」といった超越的な概念を生きることができない。それが本書の結論だ。 正義なんて本当は存在しない。同じように真理もないし愛もない。自我もないし美もないし自由もないし国家もない。すべてが幻想だ。 みなそれは知っている。にもかかわらず、ほとんどのひとはそれらが存在するかのように行動して
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