【方便 ほう・べん】 1.仏語。仏教で、下根(げこん)の衆生を真の教えに導くために用いる便宜的な手段。また、その手段を用いること。 2.目的のために用いられる一時の手段。また、その手段を用いること。てだて。たばかり。計略。 (精選版 日本国語大辞典) 1988年夏。 撞球場で藍宇に目を奪われあれはだれだと問う陳捍東に劉征が、 「一个朋友的弟弟(友人の弟さ)」 と答える。 何人かのかたが既に指摘されていることだけれど、『藍宇』においてある意味藍宇以上の謎であるのがこの「劉征(Liu Zheng)」という人物である。 陳捍東と藍宇の「運命」は、なにもかもすべて劉征によって仕組まれたものであり、ふたりの人生の変転も、その恋が死別という悲劇に終わることにも、劉征の意思が(というか無意識が?)働いていたのじゃないか──という気がしてならない。 物語が大きく動く場面において水先案内の役を買うのはきまっ