少年の名は、ビョルン・アンドレセン。“世界一の美少年”として輝いた彼の人生は、大人たちによって性的に搾取され続けた。そこに導いたのは、子どもへの愛情不在の家族、両親、そして祖母の業。 2019年、世界中でヒットした『ミッドサマー』。本編が終わると各国の観客席で次々に小さなどよめきが起きた。劇中、頭の白髪と髭を長く伸ばし、グロテスクな死を迎える気味の悪い老人。それを演じた役者の名前が、50年前、映画史に残る伝説の美少年タッジオを演じた15歳の男の子と同じだったからだ。 そのどよめきは、1971年5月23日、カンヌ国際映画祭『ベニスに死す』上映時のレッドカーペットに少年が登場した時のため息交じりのどよめきとは、まったく異なるものだった。