極刑を求めた遺族の訴えは司法に届かなかった。大阪・ミナミの通り魔事件で、2人の命を突然奪った被告を死刑とした1審の裁判員裁判判決を破棄し、無期懲役を言い渡した9日の大阪高裁判決。「憤りを通り越して、涙も出ない」。殺害された南野信吾さん(当時42歳)の父浩二さん(73)=大阪市生野区=は判決後、悔しさを隠さなかった。 「原判決を破棄する」。午前10時過ぎ、中川博之裁判長が無期懲役を告げると、黒いスーツ姿の礒飛(いそひ)京三被告(41)は証言台の前で身じろぎもしなかった。 検察官席に座った浩二さんはぼうぜんとした表情を浮かべ、のけぞるように席にもたれかかった。傍聴席の信吾さんの妻は両手で口を覆って泣きだし、知人に肩を抱き寄せられた。判決理由の読み上げが始まった約20分後、浩二さんは「吐きそうだ」と訴え、休廷になる場面もあった。 「息子と二人で判決の行方を見届けたい」。浩二さんはこの日、信