なにかひとつの趣味が高じてくると、しだいにハイスペックなものが欲しくなるのが、男のだめな習性である。たとえば自動車。いい歳をしたおっさんが「これ、時速400kmでるんだよ、すごいエンジンなんだよ!」などと説得したところで、奥さんから購入の了承を得られるとはとてもおもえない。「そんなスピード、どこでだすの」「あぶないじゃない」「あなた下手でしょう運転」と、きわめて常識的な意見が返ってくるだけである。 おそらく、どのジャンルもそうに決まっている。釣り道具。デジタルカメラ。コンピューター。そんなにすごい機能はいらない、あっても使いこなせる腕はないとわかっていてもなんだか欲しくなる。わたしの知り合いに剣道をやっている人がいるが、剣道の場合、歳をとってくるとたいてい防具に凝りだして、刺繍や彫の入った、きらびやかな胴や甲手を装着して試合に臨むのだという。数十万円の防具をつけた人たち。こういうばかなこと