印刷 標高約5300メートルにある栗城さんのベースキャンプ周辺でみられたカラス=栗城事務所提供栗城史多さん 世界最高峰の登山で最大の難敵は、カラスだった――。エベレスト(8848メートル)に挑んだ日本の登山家が今月、こんな現実に直面し、頂上を前に登頂を断念した。 数々の世界の高峰に挑んできた登山家、栗城史多(くりき・のぶかず)さん(29)=札幌市=は10月12日、エベレストの7800メートル地点でぼうぜんとなった。体を高所に慣らすことも兼ね、10日ほど前に登った時に雪の中に埋めた食料がカラスに掘り返され、食い荒らされていたからだ。 最も痛かったのは、雪を溶かして飲み水を作るため、一緒に埋めた登山用コンロの燃料ボンベがなくなっていたことだ。 標高8千メートル超では、酸素が平地の約3分の1しかなく、高山病予防のために大量の水分をとる必要がある。栗城さんは泣く泣く、ベースキャンプの仲間に