§3.1 磁性を示すのはなぜか? 磁性を示すのは、原子の磁気モーメント同士の間にそろえようとする相互作用があるからである。この「そろえようとする相互作用」を交換相互作用と呼ぶ。 基礎となる電子のハミルトニアンは、運動エネルギー(電子の運動)+ポテンシャルエネルギー(クーロン相互作用)である。クーロン相互作用は電子と電子が反発しあう力で、電気の話であり、直接は磁気モーメントと関係なさそうに見える。これらの項が磁気モーメントとどう関係するかをまず理解する必要がある。 一番簡単な例は、水素分子である。1つの電子をもつ水素原子が2つくっついたときに、エネルギー準位は一重項と三重項に分かれる。このとき、一重項はS=0であり、三重項はS=1である。スピンがない一重項状態の方が(波動関数の重なり積分が大きくなるため)エネルギーが低くなり、2つの電子は一重項状態をとる。このようにクーロン相互作用(とパウリ