吉田調書報道問題を「記者の思い込み」「チェック不足」「特定新聞の体質」と狭くとらえると、ことの本質を見誤りかねません。いち科学技術記者として、同問題への検証や批判の内容に危惧を覚えたので、ちょっと短く書いてみます。 朝日デジタル版の「吉田調書」報道を読んで、私が一番違和感を覚えたのは、「(事故調査委員会は)772人もの関係者から聴き取りをおこなったのに、『個人の責任を追及しない』との方針を掲げたため、事故の本質に深く切りこめなかった」(『吉田調書』プロローグ http://www.asahi.com/special/yoshida_report/ )という箇所でした。 「個人の責任を追及しない」という方針は、事故調査委員会のなかでも、おそらくは事故調査に詳しいジャーナリストの柳田邦男委員が提案したものと思います。そして個人の責任を追及しないことは、事故調査の基本でもあります(正確には、資料