現代社会の倫理を考える〈12〉性の倫理学 (現代社会の倫理を考える (12)) 作者:田村 公江 発売日: 2004/12/01 メディア: 単行本 基本的にはあまり面白くもなく、参考にもならない本だ。 日本の応用倫理というものは古びるのが異様に早くて、90年代やゼロ年代の前半に出た本はもう使いものにならない場合がある。このシリーズを監修している加藤尚武の応用倫理の本も、いまとなってはキツいことが多い。ここでいう「古さ」とは理論や学説の古さではなくて、感性の古さである。現在の人々が規範的な問題を扱うときに発揮されるような慎重さや目配りや配慮というものが、一昔前の本にはまったく欠けていたりするのだ。 また、この本は「倫理学」の本でありながらも、土台となる発想がフロイトやラカンなどの精神分析であるところがよくない。人間の思想や行動についての精神分析の説明が正しいとは限らない……というか、精神分