「兵士シリーズ」はノンフィクション作家、杉山隆男の代表作とよべる作品だと思う。著者は戦後、日米同盟に守られながら平和を享受する日本で自らの存在を否定する憲法の下、日陰者として生きる自衛官を追い、国防の現場へと踏みこんで行く。ときレンジャーの訓練に同行し、また潜水艦や哨戒機、F15という軍事機密の塊のような兵器に乗込み、多くの自衛官の生の声を私たちに届けている。 シリーズが進むにつれ、当初は日陰者であったはずの自衛隊がまるで硝煙に導かれるがごとく、より先鋭化していくようすがわかる。シリーズ第4弾『兵士に告ぐ』では数度の海外派遣などを経験し、さらに米軍と協力し高い戦闘力を身につけながら実戦的な軍事組織へと、本格的に舵を切り始めた自衛隊の姿がをうかがうことができる。 この「兵士シリーズ」は5作目の『「兵士」になれなかった三島由紀夫』で完結している。だが、戦後日本が受けた最大の有事、東日本大震災が
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