感傷的で皮肉っぽい人たち オタク文化はふたつの構造から成り立っていた。 旧体制への回帰という実現不可能な未来を売りにしようとする報道機関と政治体制に対する冷笑。 そしてメディアが新しく生んだ「シニカルさを共有するコミュニティ」に属したいという欲求。 最終的にこれらコミュニティの一部は、北田がロマン主義的シニシズムと呼ぶ文化と融合した。 シニシズム(冷笑主義)とロマン主義は通常、正反対と見なされている。そのため「ロマン主義的シニシズム」という表現は奇妙に思えるかもしれない。ロマン主義者は美と感傷、崇高さの追求に没頭するのに対し、シニカルな人間はすべてのもの、すべての人が利己心に突き動かされているに過ぎないと軽蔑する。そして議論に矛盾があれば大いに馬鹿にし、偽善だと笑うのだ。 北田の逆説的な洞察によれば、ネット右翼は絆を結ぶために、掲示板やブログへの投稿に皮肉とシニシズムを使った。例えば元ネッ