それは大きな問題だった。 2002年、当時17歳の谷口 "ときど" 一(はじめ)は、本来ならば大学入試へ向けて準備をしていなければならなかった。彼は、超一流進学校である東京の麻布高等学校の生徒。父・谷口尚は、日本最高峰の医科大学のひとつ、東京医科歯科大学の教授だ。しかしときどは、参考書を開いたまま無為に指をもてあそんでいた。彼の心はロサンジェルスにあった。 望みはEVO優勝。 これはときどにとって最後のチャンスだった。ゲームをプレイすることは永遠にできず、そしていつの日か、大学へ行き、就職して人生は進んでいくということはわかっていた。そこで父に提案をした。ロサンジェルスに行き、初めて開催されるEvolution Championship Seriesで闘うことを許してくれれば、帰国してからはすぐにでも勉学に完全に集中できる、というのだ。 驚いたことに、谷口尚の答えは "イエス" だった。