タグ

ブックマーク / www.aozora.gr.jp (3)

  • 倉田百三 出家とその弟子

    人間 (地上をあゆみつつ)わしは産まれた。そして太陽の光を浴び、大気を呼吸して生きている。ほんとに私は生きている。見よ。あのいい色の弓なりの空を。そしてわしのこの素足がしっかりと踏みしめている黒土を。はえしげる草木、飛び回る禽獣(きんじゅう)、さては女のめでたさ、子供の愛らしさ、あゝわしは生きたい生きたい。(間)わしはきょうまでさまざまの悲しみを知って来た。しかし悲しめば悲しむだけこの世が好きになる。あゝ不思議な世界よ。わしはお前に執着する。愛すべき娑婆(しゃば)よ、わしは煩悩(ぼんのう)の林に遊びたい。千年も万年も生きていたい。いつまでも。いつまでも。

    moerrari
    moerrari 2023/09/27
    "モータルを見るとわしは恥ずかしくて死ぬるからじゃ / 哀れなもののなかの最も哀れなものだ / 今まで殊勝に組み合わせた手できたならしいことを公衆の前にして見せるかもしれない。あの動物園の猿のように / スヰート"
  • 夏目漱石 行人

    友達 一 梅田(うめだ)の停車場(ステーション)を下(お)りるや否(いな)や自分は母からいいつけられた通り、すぐ俥(くるま)を雇(やと)って岡田(おかだ)の家に馳(か)けさせた。岡田は母方の遠縁に当る男であった。自分は彼がはたして母の何に当るかを知らずにただ疎(うと)い親類とばかり覚えていた。 大阪へ下りるとすぐ彼を訪(と)うたのには理由があった。自分はここへ来る一週間前ある友達と約束をして、今から十日以内に阪地(はんち)で落ち合おう、そうしていっしょに高野(こうや)登りをやろう、もし時日(じじつ)が許すなら、伊勢から名古屋へ廻(まわ)ろう、と取りきめた時、どっちも指定すべき場所をもたないので、自分はつい岡田の氏名と住所を自分の友達に告げたのである。 「じゃ大阪へ着き次第、そこへ電話をかければ君のいるかいないかは、すぐ分るんだね」と友達は別れるとき念を押した。岡田が電話をもっているかどうか

    moerrari
    moerrari 2022/10/25
    苦悩する兄の話 / "「何とか好い工夫はないもんでしょうか。あなたの御迷惑にならないで、そうして、父や母を満足させるような」Hさんはまたにやにや笑っていた。「そんな重宝な工夫があるものかね、君。―"
  • 夢野久作 猟奇歌

    殺すくらゐ 何でもない と思ひつゝ人ごみの中を 濶歩して行く ある名をば 叮嚀(ていねい)に書き ていねいに 抹殺をして 焼きすてる心 ある女の写真の眼玉にペン先の 赤いインキを 注射して見る この夫人をくびり殺して 捕はれてみたし と思ふ応接間かな わが胸に邪悪の森あり 時折りに 啄木鳥の来てたゝきやまずも *     *     * 此の夕べ 可愛き小鳥やは/\と 締め殺し度く腕のうづくも よく切れる剃刀を見て 鏡をみて 狂人のごとほゝゑみてみる 高く/\煙突にのぼり行く人を 落ちればいゝがと 街路から祈る 殺すぞ! と云へばどうぞとほゝゑみぬ 其時フツと殺す気になりぬ 人の来て 世間話をする事が 何か腹立たしく殺し度くなりぬ 今のわが恐ろしき心知るごとく ストーブの焔 くづれ落つるも ピストルのバネの手ざはり やるせなや 街のあかりに霧のふるとき ぬす人の心を抱きて 大なる煉瓦の家に

    moerrari
    moerrari 2022/10/19
    "泣き濡れた その美しい未亡人が 便所の中でニコ/\して居る" →こわい / "宇宙線がフンダンに来てイラ/\と俺の心をキチガヒにしかける" →危険な宇宙線をふんだんに配合 / "超人らしいステキな気持ち" →なりたい
  • 1