夢野久作 猟奇歌

殺すくらゐ 何でもない と思ひつゝ人ごみの中を 濶歩して行く ある名をば 叮嚀（ていねい）に書き ていねいに 抹殺をして 焼きすてる心 ある女の写真の眼玉にペン先の 赤いインキを 注射して見る この夫人をくびり殺して 捕はれてみたし と思ふ応接間かな わが胸に邪悪の森あり 時折りに 啄木鳥の来てたゝきやまずも ＊ ＊ ＊ 此の夕べ 可愛き小鳥やは／＼と 締め殺し度く腕のうづくも よく切れる剃刀を見て 鏡をみて 狂人のごとほゝゑみてみる 高く／＼煙突にのぼり行く人を 落ちればいゝがと 街路から祈る 殺すぞ！ と云へばどうぞとほゝゑみぬ 其時フツと殺す気になりぬ 人の来て 世間話をする事が 何か腹立たしく殺し度くなりぬ 今のわが恐ろしき心知るごとく ストーブの焔 くづれ落つるも ピストルのバネの手ざはり やるせなや 街のあかりに霧のふるとき ぬす人の心を抱きて 大なる煉瓦の家に

[moerrari]

"泣き濡れた その美しい未亡人が 便所の中でニコ／＼して居る" →こわい / "宇宙線がフンダンに来てイラ／＼と俺の心をキチガヒにしかける" →危険な宇宙線をふんだんに配合 / "超人らしいステキな気持ち" →なりたい

[goldhead]

"自分より優れた者が 皆死ねばいゝにと思ひ 鏡を見てゐる"

[notinemployment]

おちつく

[navix]

via ネットゲリラ

[Nean]

なるほど、これはおもしろい。

[medtoolz]

これはいい。。

[duskTdawn]

こういうのを読むと学校の「文学」学習がいかにくだらないかよくわかる。

[nessko]

「春の夜の電柱に／身を寄せて思ふ／人を殺した人のまごゝろ」

[I11]

傑作。「白塗りのトラツクが街をヒタ走る　何処までも／＼　真赤になるまで」

[ngsw]

禁忌侵犯に対しての憧憬。夢野久作ってほんと正直なんだよなあ。

[xx-internet]

「脳髄が二つ在つたらばと思ふ 考へてはならぬ事を考へるため」