幕末へとひた走る、疾風怒濤の時代。歴史の花道から消された信念の集団があった。 長塚圭史が原作としたのは、鬼才・山田風太郎の異色の歴史小説『魔群の通過』です。維新前夜、尊皇攘夷の志を胸に決起し、京を目指した水戸藩天狗党の恐るべき、そして哀しい一千キロの大遠征の記録―。風太郎が[日本において唯一の内戦]と位置付けた、歴史上稀にみる凄惨な史実ではありながら、その行軍の途中での様々な逸話は、粒際立った登場人物たちの純粋な精神が感じられ、どこか牧歌的な魅力を放ちます。 そして、今作はこの悲劇の後日譚としてのみ言及されることが多い、天狗党の残党による復讐集団、【さいみ党】を中心に据えることで、更なる人間の闇に光を当てます。目的も志も見失い、復讐の幽鬼と化しても尚、そこに正義を見つけようとする姿に、私たちは何を見るのか―。史実を多層的に描いた原作を得て、長塚圭史が激しく<現在>を問いかけます。時空を自在