沈黙を守ってきた埼玉県鴻巣市のクラフトディスティラリーに初潜入。マレーシアの実業家が設立した光酒造鴻巣蒸溜所を訪ねる2回シリーズ。 文・写真:ステファン・ヴァン・エイケン 光酒造鴻巣蒸溜所の門を通り過ぎる。その瞬間、自分が風光明媚なネーデルラント地方のどこかにいるような気がした。そんな錯覚にとらわれるのも無理はない。ビジターの正面には印象的な灰褐色の建物が2棟あり、階段状破風のファサードが 17世紀のオランダやフランドルに特有の建築様式なのだ。 左側に視線を移せば、対照的なほど真っ白な邸宅がある。こちらはフランダースの田舎から移築されたような建築だ。だがここは欧州ではなく、日本の田舎である。田舎といっても、東京から北にわずか1時間ほどという近さなのではあるが。 排水タンクを別にすれば、ウイスキーづくりを連想させるヒントはない。例の2棟の建物に向かって歩いていくと、この建物同士をつなぐ錬鉄製