私事で恐縮であるが、『茂木健一郎の脳がときめく言葉の魔法』(かんき出版)という本を出した。言葉には、実際に人生を変える力があると、私は考えている。 言葉が、人間の世界にどのように登場してきたかと考えると面白い。一つの有力な説は、会話は仲間どうしの絆を確認する「毛づくろい」の発展形として進化してきたというもの。お互いに毛づくろいする代わりに、会話を交わすことで、絆を確認するのだ。 ところで、「言葉」には、「魔法」のような力があるということを、科学的な立場から説明すると、つまり言葉にはそれだけの「幻想」(イリュージョン)としての力があるということになる。 現代の脳科学においては、幻想には歴然とした現実感が伴うと考える。たとえば、「お金」や「愛」は確かに物質的な実体がない幻想かもしれないが、その幻想を通して、私たちは一喜一憂し、社会が実際に動いていく。 ハーバード大学の著名な研究者は、人間が自分