法哲学者の井上達夫氏は日米安保の誤った認識が広まっていることに苦言を呈す。同条約はアメリカに日本防衛義務を課すが、日本にはアメリカを防衛する義務がなく片務的だと言われている。しかし、じつは日本のほうが重い負担を負っていると井上氏は語る。 「日米安保はアメリカのメリットのほうが圧倒的に大きい。日本はアメリカに日本領土のどこにも米軍基地を設置する権限を与え、首都東京の上空も含む広範な空域の航空管制も米軍横田基地に与えている。また、アメリカは日本防衛以外の戦闘目的のために在日米軍基地を使用できる。しかも、基地の使用について日本政府は実効的に統制できない。これはものすごく危険な状態です」 「国際法上、戦争している国に基地や兵站(へいたん)を提供した国はその交戦国に加担したと見なされ、中立国ではなくなります。例えばかつてのベトナム戦争で、北ベトナムが日本を攻撃したとしても、それは北ベトナムの『正当な