第68回 チャップリン(その一)---父は急死、母は発狂。貧民街で生まれ、孤児院に収容された世界の「喜劇王」 一九七二年、『モダン・タイムス』のリバイバル上映を口切りにして、チャールズ・チャップリンの作品が、次ぎ次ぎに、上映されるようになった。 その事情は、まったく与り知らないが、一年後には名画座にも、チャップリンの作品がかかるようになった。 私が初めて見た、チャップリンの作品は、『独裁者』。 実に楽しかった。 小林信彦さんが、マルクス兄弟を、本格的に紹介しはじめた時期だったから---上映はかなり後からだけれど---アメリカの喜劇には、特段の興味を抱いていたが、こんなに凄い作品だったとは、思いもつかなかった。 併映されたのは、コスタ・ガブラス監督の『戒厳令』。 余談だが、イヴ・モンタンが、左翼勢力の弾圧を指導するアメリカ人役で、出ていた。イヴ・モンタンは、おそらく、当時のフランス、というか